指導理念

指導理念

はじめに

2019年11月、大学入試改革の一環として2020年度に予定されていた大学入試共通テストへの民間英語試験活用の実施が延期されることになりました。この2019年は一連の大学入試の制度改革をめぐる騒動によって、教育現場、保護者の皆さん、そして何より受験の当事者である生徒の皆さんが大いに振り回された一年でした。

このとき延期された英語の民間試験の利用は問題点が多く、もっと早い段階での中止決定が賢明であったと思います。しかしながら生徒、保護者の皆さんの悩みの多くが、「どんな試験が課されるかがはっきりしないから、どう勉強したらいいかわからない」といったものであったこともまた、問題であると考えています。

多くの生徒さんが考える「英語の勉強」というのは、「英語という言語を理解すること」ではなく、「ある特定の英語試験形式の対策をすること」だったり「試験という形式の中で効率的に評価されること」になってしまってはいないか?私はこのような懸念を長年抱いてきました。

身につけるべきは〈英語を理解する力〉

もし「英語の勉強=英語試験の設問対策」ならば、試験形式の変更はそれまでの勉強が無駄になることを意味するでしょう。しかし球場やライブ会場が変わったところで野球選手やミュージシャンの実力が落ちないように、「本当に英語を理解する力」を身に着けた人にとっては、試験の形式はほとんど問題ではないのです。

「英語というのはこういう言語で、こういう方法で言いたいことを伝えあっている」という基礎が理解できていれば、長文読解はもちろん、どんな類の文法問題であってもその基礎を使って考えることができますし、writingやspeakingで自分の言いたいことを表現することもさほど難しいことではありません。受験の形式がいかに変わろうともいくらでも対応することができるでしょう。英語の試験対策だけに時間を費やした人と違い、必要であれば社会に出たあとも英語を使っていくことだって可能です。

当塾ではこのような「英語という言語を理解すること」を最重要課題として掲げ、指導を行っています。培われた英語全体に対する基礎理解は、学校の授業中など日々の学習の中でも発揮され、さら磨かれていきます。中には「学校での普段の授業中に自分で教科書を読めば内容がきちんと理解できるから、英語だけは定期試験の前に特に勉強しなくても、毎回9割くらいは取れるようになった。」という生徒さんもいます。

もちろんしかるべき時期には定期テストや入学試験に対する指導もしっかりと行いますが、ひとまず設問や解答を意識しないで行う「英語の基礎理解力を高める学習」が、一見遠回りのように思えても実は最も重要で最も効果的だと考えます。

私たちにとって最適な英語の学習法は

もう少し具体的に当塾の指導方針をご紹介いたします。

例えば「赤ちゃんが言語を習得する方法が最も自然な言語の学習方法である。」といった類の話を聞いたことがあるかと思います。曰く「赤ちゃんは周りの大人たちが話すのを耳で聞いて、いつの間にか自然とその言語を習得する。だから私たちもそのようにして英語を習得するのが自然である」といったような内容です。しかしこのような話は完全に間違っていると思います。

そもそも当たり前の話ですが、赤ちゃんは「こう言えばこう伝わるよ。」という説明に使えるはずの、すでに理解している言葉が一つもありません。加えてもう知っていることを応用する知恵もまだありません。だから赤ちゃんには長時間その言語にさらされ続けるという、実は非効率的な方法以外に選択の余地がない、というだけの話ではないでしょうか。

一方私たちはどうでしょう。私たちにはすでにきちんと使いこなせる日本語という言語があります。また「あれがこう使えるなら、これもこう使えるはず。」といった類推や応用ができるだけの思考力もついています。これらの武器を最大限利用しないのは率直に言ってもったいないし、中学や高校まで勉強してきた生徒の皆さんに「君たちがその年齢までに身に着けた言語力や知恵なんて使っても、赤ちゃんには絶対敵いません。頭を使うのなんかやめて赤ちゃんのマネをしなさい。」という指導は極めて失礼ではないでしょうか。

当塾では積極的に生徒の皆さんの日本語力を利用し、時には日本語と比較をしながら、英語という言語ではどうやって言いたいことを伝え合っているのかをきちんと理解してもらえるよう授業を進めていきます。ネイティブには絶対に真似ができない、普段日本語で話したり考えたりしている人にとって解りやすく親切な英語指導をご提供いたします。また講師がテキストの内容、訳文、答えを一方的に話すだけとか、とにかく何でも暗唱・丸暗記、といった乱暴な指導は一切いたしません。授業中は生徒さんとしっかりコミュニケーションを取り、理解度を確認しながら丁寧に指導することを心がけています。

英語を知ることは日本語を知ること

そしてこの過程にはもう一つ重要な意味があります。日本語と英語を比較することは、英語を学ぶと同時に日本語という言語の特徴や表現のクセに対する気付きになります。また授業中は、「英文を見てどう考えたのか」「どこは理解できていて、どこが理解できていないのか」を必ず生徒さん自身に言語化してもらい、躓きがある部分でもすぐに答えを提示せずに、生徒さんが理解していることから順々に確認しつつ、生徒さん自身の力で答えに辿り着くように誘導していきます。これは、英語そのものを理解する上でも重要なのですが、さらに自分の思考の整理・分析の訓練でもあり、考えたことをきちんと言語化するトレーニングにもなります。結果的に多くの生徒さんの論理的思考力や広い意味での日本語力が向上しているという点も、胸を張ってお伝えできる当塾の長所です。

子どもと真剣に向き合う教育者であれば、社会の将来のあり方に鈍感ではいられません。技術の進歩は目覚ましく、現在の高校生の皆さんが社会に出るころには超高性能の自動翻訳ソフトがスマートフォンに標準搭載され、アプリを起動するだけで英語ができなくても海外の人たちと全く問題なくコミュニケーションがとれる、そんな世の中になっている可能性もあります。実用的なコミュニケーション英語が重要だ、などといった話は長くてもこの10年の間に過去のものになるでしょう。

そのような状況で、英語を勉強する意味とは何かを日々考えています。少なくともそれは設問対策を通じた、試験会場だけでしか通用しないような見せかけの優秀さを偽装する技術の習得であるはずがありません。私たちは英語の学習を通じて、思考力、応用力、日本語も含めた言語一般へのより高い理解力といった知的能力全般の向上をこそ、目指すべきではないでしょうか。

「答え」ではなく「考える力」を。それが進むべき道であると強く確信しています。